2012年9月22日土曜日

工業製品としてのiPhone5の愛でかたと、iPhone5のキズで半年後におこること

iPhone5が昨日発売されました。

もちろんワタシも買い替えるのですが、ブラックにするかホワイトにするかどうしても実物を見ないと決められない(古いタイプの人間ですね)ので発売日に見てきました。

実際のiPhone5、こりゃ凄い。

何が凄いって商品としての商品力、もっというと工業製品としての作りです。
ハードウエアと書いてしまうとどうしてもチップとかロジックボードとかの話と混同してしまうので、もっと単純にケースの話に絞って説明します。

まず個人的にはこちらにしようかと判断するに至ったホワイトモデル。自転車好き、アルミ好き、切削加工好きとしてはこちらを選ぶのが吉です。背面のパネルはアルミということでアルマイトであろうと思われますが、MacBook Proなどのグレーのサテンっぽい質感とはまったく異なるパールマイカというか明るい白のきめ細かい質感が新鮮。

アルマイトで(アルマイトだったとしたら、ですが)こんなアルマイトは見たことがありません。おそらく非常に細かいブラストのあとアルマイト処理をしていると思います。

アルマイトはこういう梨子地の粒子にかけるとキラキラと粒子が光って見えるので、それでパールっぽい質感になるのですが、ケースのベゼル(外周)とは色がだいぶ違うのでもしかしたらアルミ合金の品番自体を(色のために)変えてあるかもしれません。ベースとなるアルミ合金の品番によってアルマイトの掛かり方と色は変わってきますし、もしそれが本当だったら凄まじいこだわりと言わざるをえません。

加えて、ホワイトモデルはエッジの面取り(C面取りといいます)がアルミ合金の色そのものなのでキラキラとして切削のシャープさも強調されており、金属加工として、アルミ合金としての素材感や加工感はより色濃く味わえるでしょう。

一方のブラックモデルは非常にシック。
こちらはPVD加工したロレックスみたいなカッコよさ。PDVでツヤ消しブラックのロレックスといえば藤原ヒロシさんが持ってて日本では有名になりましたが。同じ黒だけど表のガラス、サイド(それもツヤ消しとC面取りのツヤ有り)と背面のアルミ、 背面上下の樹脂、と質感とツヤ感(だけ)が違うってのはオシャレです。

いわばバットマンのコスチュームみたいな。
あれがダークでシックでワルっぽくてカッコいいのはラバー、レザー、ナイロンなどなど真っ黒ですが素材感が全部違うからです。

さて、iPhone5の工業製品としての見どころは、色を中心にした加工だけにとどまりません。背面中央のアルミバックプレートと上下の樹脂(?)ガラスのパネルの接合面、ここを触ってみてください。まったくの別々のパーツなのに接合面が完全ツラいち、段差がまったくありません。

これはAppleのオフィシャルムービー(5分40秒くらいから)でも明らかになっていますが、3枚のパネルを組み付ける時に、その厚さを計測して、多くのパネルのミクロン単位の厚みの誤差のなかから一致するものを選び出して接着しているワケです。いかに工業製品とはいえ、厚みなどのサイズは誤差がでてしまいます。この許容できる誤差を公差といいますが、その公差内で出来たパーツの中からさらに組み合わせを選んで組み付けているわけですね。

こちらは @HIRO_YUKIによる大阪弁バージョン。仕事早い。

これはまるで高級機械式腕時計のようです。
かつてここまで質感のためだけにやったデジタルガジェットはワタシのつたない知識では知りません。しいていうならVERTUでしょうか。ただしVERTUは機械式腕時計と同じように手作りでそれを実現しています。かつて高級品といえば、こうした精度の高さは手作り(=職人技)で行うしかなく、よってそれが高級品の根拠でもありました。iPhoneはテクノロジーをもってそれを実現しているワケで、目的は同じでもまったく違うアプローチというのが面白いですね。時代が時代ならマリー・アントワネットしか味わえなかったところがiPhone5は5000万人に広めています。

iPhone5というかAppleという企業は凄まじい勢いで高級品の民主化を行っているともいえますし、この質感を知ってしまった以上、他社にたいしては凄まじくハードルを上げてしまったともいえます。

さて、すでにiFixed.comなどでiPhone5のアルマイトがキズがつきやすいという声が上がっています。が、そもそもiPhone5はアルマイトですから、はげるものです。

たとえば、自転車のクランク(ペダルと繋がっているところ)はこんな感じになります。ベースはグレーのアルマイトです。

このアルマイトのハゲですが、もちろんエッジ部分まで色を付けているブラックモデルの方が目立つのは間違いありません(下地のアルミシルバーになるので)。たしかにエッジハゲるかもしれませんが、それは品質が悪いのではなく、単に「アルマイトはそういうもん」なのです。


ただ、個人的にはiPhone4のステンレスの方が耐久性は高いので軽量化のためとはいえ、アルミにしたのはどうかな…と思います。

そして仮にそうなってもそれを味として愉しむのが粋なオトナの選択といえるでしょう(昔の鉄砲のエッジのハゲが意外とかっこいい、みたいな)

半年一年後にアルマイト剥げたー、エッジが欠けた、という声は間違いなく続出するでしょう。で、「ま、こんなもんだよね」。という人がいたらそれはアルミに慣れてる自転車乗りということで…… ;-)



One more thing.
iPhone5はアルミですから、iPod nanoのように、実際はほぼどんな色でも付けることは出来ます。iPhone5sはもしかしたらカラーバリエーションができるかもしれませんね。

One more thing
より強いアルマイトとして日本のミヤキだけができる特殊アルマイト「カシマコート」を使うという手もあります。これだと金色〜茶色〜ダークブラウン〜限りなく黒に近い茶、という色になりますが。

One more thing
iPhoneもMacBookもこれ以上軽くするにはマグネシウムかカーボンを使うしかありません。がマグネシウムは電波を吸収したりといろいろ難儀なので、Appleがこれ以上製品を軽くしようとするならカーボンに走ると予言しておきます(少し根拠はあり)。

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